2008年9月14日日曜日

経済学を覆うマルクスの亡霊

カレツキによるとマルクス経済学から乗数効果も有効重要も導き出せる。だから反ケインズ派はケインジアンを隠れ共産主義者だと叩くのだろう。カレツキと同じのユダヤ系ポーランド人のマルクス経済学者ランゲの経済計算論争も有名である。ケインズ・サーカスの中心ジョーン・ロビンソン達や容共のニューディーラーもだからマルクスを認めたのだろう。ケインズの訪ソ感想も実態は言われてるより冴えていない。記録ではケインズはソ連がヨーロッパ諸国をいつ超えても可笑しくないと言ったとされている。それより自由が抑圧されている息苦しさに強い嫌悪感を覚えたという。多くの国がNEPに似た形でソ連の後を追っている。ガルブレイスによると大恐慌と不況の最中、ソ連が大躍進し、瞬く間にアメリカに次ぐ工業超大国と化し、さらに社会保障や完全雇用をやってのけたという。今や「~カ年計画」は世界中で実行されている。ヴェブレンはソヴィエトを理想的形態としていた(Council Communism(評議会共産主義)やチトー主義かと思われる)。そして1970年代から調子を崩したのだという。しかし、この「70年代」といえばケインズ派が没落し、反ケインズに傾いた時代のようだが。その代表格といえばロバート・ルーカスだ。ルーカスが提唱したのが合理的期待だが、ルーカスと共に提唱者であるサージェント曰く共産主義計画経済を「神の見えざる手」に修正したかのように思えるものである(勿論マルクスはそれを疎外だとして人間の見える手で経済を自由に思いのままできる世界を展望したのだが)。ルーカスは準マルクス主義で博士号を取得している。経済的決定論、技術的決定論がテーゼだったから分析的マルクス主義の源流もここにあるだろう。あのシュンペーターも自分の考えや目的がマルクスに基礎があると言う(イノベーション理論をサッチャーは常に気にしていたという)。日本でも構造改革論が新自由主義者に利用された。鄧小平もモンペルラン・ソサイエティーの影響で市場経済を導入したのだとか。だからスハルトやピノチェトを支持したのだろうか。池田信夫氏によるとハイエクとマルクスは両立するそうだが。所謂アメリカで元マルクス主義者が保守の論客として注目されるのもレーガン政権である(但し、その前にもケネディ政権のロストウといった転向者もいた)。レーガンは元労組の委員長で共産党の非合法化に反対する特異な反共主義者だった、ジョン・リードを基にロシア革命を描いた映画レッズを好んでいたという(レーガンやワインバーグが尊敬したゴールドウォーターはユダヤ系で民主党から共和党に転向し、現在の共和党イデオロギーの父とも言える人物である)。マルクス経済学の潮流は20世紀前半のソ連の閉鎖都市と後半の中国の経済特区にあらわれているかもしれまい。政治で言えば戦前のスターリン主義(ソビエト共産主義、吉本隆明によるとファシズムもこれに含む)、戦後のトロツキー主義(新左翼やヒッピー、ゲバラ主義、ネオコン)の差異に当たるだろう。今日では後者はカリフォルニアン・イデオロギーの影響からか「リバタリアン」である。このリバタリアンも以前紹介したようにアナキスト、特にアナルココミュニストが元々使っていた言葉である。名残があるのだろうか。オブジェクティビズムのアイン・ランドは元マルクス主義者だったらしい(レニングラード大学を卒業したというのはフリードマンの師匠のサイモン・クズネッツがボリシェヴィキの統計局長だったことと似たことだろう)。

後、サプライサイダーとマルクスの関係を調べているとこういうものが出てきた。
Both supply-siders and their opponents have been keen to claim the mantles of thinkers as diverse as Karl Marx and Adam Smith. Jude Wanniski has claimed both as supply-side thinkers due to their advocacy of a gold monetary standard and more specifically their focus on the agents of production in an economy. Barton Biggs, chief investment strategist of Morgan Stanley, described Wanniski's book about supply-side economics, The Way the World Works, as the "most important" economic book published since Marx's writings.
http://en.wikipedia.org/wiki/Supply-side_economics