2008年1月15日火曜日

現代のメシア論『ポスト・ヒューマン誕生』

レイ・カーツワイル
井上健/小野木明恵/野中香方子 訳
2007 日本放送出版協会
私が興味を持ったのは著者の両親がホロコーストから逃れた移民ということを耳にしてからである。そのようなかつての人間の不合理主義と対峙する、テクノメシア論とも言うべき本書の楽観的な姿勢は勇ましい。アルビン・トフラー、ダニエル・ベル、この手の未来学者にはユダヤ人が多い。元ドイツ共産党員で反ナチ文化人の一人だったOssip K. Flechtheimがこの未来学という語を造って以来、未来学はニヒリズムやペシミズムの対極にあった。現在も反ユダヤ主義で苦しむ人々、思うように最新の治療を受けられず苦しむ人々が大勢いる。そのような人々が救われる未来はニュートンも見た人類の終末であり、ポスト・ヒューマンの誕生であろう。