2008年2月6日水曜日

月は無慈悲な夜の女王

ロバート・A・ハインライン
矢野徹 訳
1976 早川書房

私の好きなロバート A. ハインラインの名作。アメリカ革命、ロシア革命、メキシコ革命が関係していて、モルゲンシュタイン、クラウゼヴィッツ、マキアヴェリ、ゲバラの戦略が影響している。ソ連が解体した後はロシアSF賞を受賞した。「Tovarishch」や「Pravda」などと旧ソ連・ロシア語の慣用句や文法が多く見れる。リバタリアンのハインラインも革命に興味があったってことか。

He supported himself at several occupations, including real estate and silver mining, but for some years found money in short supply. Heinlein was active in Upton Sinclair's socialist End Poverty in California movement in the early 1930s. When Sinclair gained the Democratic nomination for governor of California in 1934, Heinlein worked actively in the unsuccessful campaign. Heinlein himself ran for the California State Assembly in 1938, but was unsuccessful. In later years, Heinlein kept his socialist past secret, writing about his political experiences coyly, and usually under the veil of fictionalization. In 1954, he wrote, "...many Americans ... were asserting loudly that McCarthy had created a 'reign of terror.' Are you terrified? I am not, and I have in my background much political activity well to the left of Senator McCarthy's position."http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_A._Heinlein
宇宙の戦士で右翼だのタカ派だの叩かれ、ロボコップの監督に散々にされたハインラインにもそういう過去があったのだ。アシモフによると、保守的になったのはハインライン夫人のせいだとか。ガンダムも間違ってなかったってことか。矢野さんは知らなかっただろうね。

ロボット兵器

T-800はT-80の進化系であると言ってみる。スカイネットの審判の日もソ連が核実験に初めて成功した8月29日だ。レッドブルで共産主義者を熱演したシュワもカストロの葉巻を好み、ケネディ像と共に尊敬するレーニン像を持っているという。ウォーズマンじゃないけど。オブイェークト

これは皮肉である。ロボット兵器だけではない。特に日本では偏った情報が散見される。学会では偏った情報を鵜呑みにしたり撒き散らす馬鹿は処分されるが、学会の外にいるので勝手放題だ。まず、ロボット兵器はアメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、ソ連にもあった。アメリカは1910年代にはオートパイロットの軍事用ロボットをテストしている。1898年にはテスラがラジコンボートを実験しているのだ。そしてイギリスとドイツは1940年代であり、それぞれ歩行ロボット、自走爆弾などである。ソ連は無人戦車Teletankを開発し、実戦に投入した。ウリナラ起源というかテクノナショナリズム、偽史プラウダめいた議論はいい加減にした方がいい。コンピュータ開発史やエジソンの議論も未だに収束していないようにこれは学問の発展を阻害する。科学史や技術史には普遍法則があることを忘れてはならない。

2008年2月5日火曜日

ヴァリス

フィリップ・K・ディック
大滝啓裕 訳
1990 東京創元社
またあの数字だ。Ken MacLeodの馬鹿馬鹿しさに匹敵する。気になるのは冒頭の「大ソビエト事典第6版」のヴァリスの説明。

巨大にして能動的な生ける情報システム。アメリカの映画より。自動的な自己追跡をする負のエントロピーの渦動が形成され、みずからの環境を漸進的に情報の配置に包摂かつ編入する傾向をもつ、現実場における摂動。擬似意識、目的、知性、成長、環動的首尾一貫性を特徴とする

やっぱり大ソビエト事典だからマルクス主義的悪文。小説も批評もトンデモだが、まだ理解しきれてない部分があるので結論はやめとく。さて、今回紹介する映画は語呂が似ている。
監督:ジョン・ブルーノ
1998

ターミネーター2やT2 3-D: Battle Across Timeでデザイン(スタン・ウィンストンの方が上)に参加したジョン・ブルーノはこれで監督をデビューし、ティペット御大が監修している。主演のカッコイイ女性は「ハロウィン」のトニー・リー・カーティスで、ユダヤ人二枚目俳優トニー・カーティスと絶叫クイーンのジャネット・リーの娘だ。電磁波生命体がロシアの宇宙ステーションから調査船の工作機械をハックしてノイマンマシン化、アルゴリズム進化するというお話(トランスフォーマーに似ているか)。嵐で通信に障害がでたため、世界中をハックできなくなる。最後はエイリアン・クイーンのようにスーパーロボットで襲ってくる。メッセージは陳腐だが、「お前らは菌(ヴァイラス)だ、平和の邪魔になるから我々の体の一部になれ」である。この言い草何に似てるでしょうか?どっちがウイルスなんだ。さて、次はディックに関連した映画である。
スクリーマーズ
監督:クリスチャン・デュゲイ
原作:フィリップ・K・ディック
主演はロボコップのピーター・ウェラー、原作はディックの「変種第二号」である。ディックは妻が左翼で社会主義者でも、どんな全体主義も同じだと一刀両断している。ロン・ポールみたいなリバタリアンになればよかったのだが、ユナボマー級のNGをしてしまった。ディックの作品はマルクス主義者たちに好まれた。それはディック自身の言葉で語れば「私は共産党員ではなかったが、しかし基本的には資本主義に対してネガティブなマルクス主義的な視点がある。」からだ。映画では原作の冷戦から企業と労働者の戦争という構造になっている。私が記憶を最後の私有財産と主張するのはディックの影響(トータルリコールとか)もある。誤解されているが彼はサイバーパンカーではない。 後、これもよく誤解されているが
、ロボコップはロボではなくてサイボーグであり、ターミネーターでカイルはT-800をサイボーグと言ってるが、厳密にはロボットである。キャメロンよ、勉強してこい!

マルクスの亡霊たち

マルクスの亡霊たち
ジャック・デリダ
増田一夫 訳
2007 藤原書店

インベーダーはドン・シーゲルのボディ・スナッチャーから共産主義のメタファーでもあった。赤狩りの当時は身近に見えない恐怖が潜み、表面ではわからないから、人々は強迫観念に囚われていた。さらにそれは憑くと言われている(ディズニーは関係があっただけで「感染」を疑われた)。前に言ったボーグとも繋がる、「お前の物は俺の物」だ。古いゲームだが、ロックマンワールド5のマーキュリーみたいなものか(ロックマンで「共産主義」なんて言葉が出たときは驚いた)。マルクスは共産主義を亡霊と呼んだ。ボディ・スナッチャーと亡霊は近い。
ボディ・スナッチャー:恐怖の街
監督:ドン・シーゲル 原作:ジャック・フィニイ
1956

Gespenstは今やロボットだったり、宇宙船だったり、潜水艦だったりと思想とは無関係のようだが、それは深いものがある。デリダもその重要性を知っていたのだ。私はデリダのベンヤミン論は嫌いだが、亡霊に注目したのは流石である。しかし、亡霊はハンターとされているが、むしろスナッチャーだ。スナッチャーだから、共産主義者のスパイがあそこまで暗躍し、共産主義があんなに多くの人々を惹きつけたのではないか。ケンブリッジ・ファイブのように全てがオルグされたわけでもないし、紅衛兵のように全てが洗脳されたわけでもないが、そういう得体の知れないものであることは確かである。

2008年2月3日日曜日

エイリアン

私が言うエイリアンというのはあのち*こ頭の宇宙人の映画でもなければ、お*り頭のニコチャン星人でもなく、エイリアネイション(疎外)のことだ。全人類にとってこれは最大の問題である。これらを提示したマルクスたちを本当に尊敬する。ハイデッガー本人曰く「世界内存在」「故郷喪失」というものはマルクスが疎外論で既に発見していたという。核戦争や宇宙人、ロボット、未知のウイルス、テロリスト、サイコキラーに襲われる恐怖はすべて疎外に収斂できる。これらへの対策は反銃規制やスターウォーズ計画のような防衛構想、ロボット工学三原則といった形であらわれるが、それでいいのか。疎外と闘える人々、つまり、良心ある女性、医者、ジャーナリスト、軍人、科学者は作品の中での話である。疎外は必然的なものである。もし核戦争の危機があったらシェルターで生き残るのは「政府、大富豪、カルト、ゴキブリ」だ。やはり下部構造から上部構造にシフトしない限り問題は消えない。疎外を無くすには共産主義しかないのだ。

2008年2月2日土曜日

すばらしい新世界

オルダス・ハクスリー
松村達雄 訳
1974 講談社
ボカノフスキー。ロシア系といえばこれか。時計じかけのオレンジでもルドビコの権威としてブロドスキーというロシア系がでてくる(さらにアレックスたちはロシア語に似た英語を使う)。これには唯物論的な研究、この場合、行動主義や条件反射学しか許されなかったソ連の生理学に対する欧米の見方が影響している(日本のガンダムのミノフスキーはちょうどツィオルコフスキーのようなものと脳内補完)。つい最近、「クライシス・オブ・アメリカ」でリメイクされた「影なき狙撃者」もそういう内容であり、共産中国の「洗脳」とも結びつく(後はハーバードやイェールで教鞭をとったロバート・ジェイ・リフトンが詳しいので読んでやって)。さて、すばらしい新世界で崇められるフォードはソ連やドイツとのスキャンダルで有名だ。1932年発表当時のドイツはヒトラーが首相になる前、つまり、ヒトラー内閣ができる1933年1月より前なのでワイマールであるが、私はフォードがなぜ反ユダヤ主義的だったのかが気になる。「国際ユダヤ人」というト本によると、フォードはユダヤ人の本質を私利私欲と見ていた(ただし、この本には反論がでている)。これが本当だとすればマルクスやある論理学者にも通じる。フォードが社会主義者やリベラルと親しかったのも事実である。戦後もフォード財団が世界各国で社会主義政権や社会主義的政策に関与し、ダレスや冷戦外交やマッカーシズムの邪魔になったことを考えれば納得する。コジェーヴは「マルクスは神、フォードはその予言者」と言ったが、すばらしい新世界ではGodがFordになって、マルクスは主人公になっている。この小説の科学的なアイディアの多くは以前に紹介したJBSホールデンにある。ソ連と関係があった兄ジュリアンに比べ政治的ではなかったオルダス・ハクスリーがマルクスやレーニンをネタにするのもホールデンの影響か。

スタートレック

新スタートレックやデータ少佐は知っているから、現在は宇宙大作戦を少しずつ観ている。スタートレックもマイノリティを差別しないところでインデペンデンス・デイと同じである。カーク船長もミスタースポックもユダヤ人であり、ウフーラは黒人である。

たしかスラッシュドットでビル・ゲイツがボーグになってたような。ビル・ゲイツの買収したり潰すというアメリカ人が抱くイメージは同化したり潰すボーグと重なるが、ボーグには特許法も著作権もなく全情報を共有するからビル・ゲイツに言わせれば「共産主義」になる。やはりビル・ゲイツもストールマンが言ったように共産主義者なのか?