2008年2月9日土曜日

ディファレンス・エンジン

ウィリアム・ギブソン、ブルース・スターリング著
1993 角川書店

前回はスターリンだったが、今回はスターリング(とギブソン!)である。サイバーパンクの先頭に立ってきた二人の共著でスチームパンクの代表作と聞けば凄いが、知識があれば読める。ディファレンス・エンジンの世界ではマルクスはアメリカに亡命し(ニューヨーク・トリビューン紙の特派員だったから不思議ではない)、「コンピュータの父」バベッジの考えを摂取して科学的共産主義を唱える(実際資本論はバベッジに依っている)。スチームパンクと共産主義は近いということか。共産主義の象徴だった鎚や歯車、デバイダはスチームパンクの趣向にも合う。たしかに今も昔も共産主義はレトロフューチャーのようなものだ。メタルギアのグラーニンが「時代を動かす歯車」という表現を使っていたが、「歴史を動かす歯車」みたいな台詞は革命の必然、決定論的な唯物論を信じる共産主義活動家が好んで使う(他にも「鉄の規律」など)。歯車は共産主義やプロレタリア、社会主義の象徴でもある。中国やベトナムの国章、アンゴラなどの国旗、日本共産党の党章、アメリカ共産党(CPUSA)の党章にもあしらわれている。私の世代では歯車といえば銀河鉄道999の機械化帝国である。メーテルはロシア帽を被ってるロシア美女、銀河鉄道はシベリア鉄道のようなものだからソ連のアレゴリーではないか。機械化帝国があるアンドロメダ星雲はエフレーモフなどの小説で馴染み深い(このブログの名もそういう意味でつけた、アンドロメダ星雲はあの野口悠紀雄先生も読んでいる)。機械化帝国もソ連のように飢餓の克服のために楽園にするのが、結局は拉致も処刑もしまくり、理想を謳う憲法も有名無実な独裁制、ディストピアになる。プロメシュームの顔が強調されるのは、ちょうどスターリンの見ているようなポスターやビッグブラザーと同じことだ。自分の身内に容赦しないのもスターリンと同じだ。「永遠の命」があるせいで働く意欲が喪失されているのは、国有化と保障のせいで働く意欲が喪失したソ連の計画経済と似ている。経済的には機械化の強行を工業化にすれば似ていなくもない。異なるのは機械化帝国は飢餓を克服できた点だ。私はゲームが好きでメタルギア、鋼鉄帝国のファンであるから五芒星や歯車ときたら興奮する。鋼鉄帝国に出てくる独裁者もまたサウロンであった。ゲーム脳を唱えた森教授はソ連がつくったからテトリスは兵器だと言っているが、それなら革命が起きるだろ。X-Playでロシア的倒置法が出てきたがあれは革命前夜なのか。ロシアでは、ゲームがあなたをプレイする!!